停滞のリズム/カンチェルスキス
もしゃべらなくなり、女っ気もなく、我を忘れさせてくれるものは唯一、マスターベーションの射精した瞬間だけだった。残りのほとんどの時間は、自分自身に取り憑かれてるような状態だった。
海浜公園のベンチで夕陽を見送り、おれの後ろを半パンに半袖のジョギングのおっさんが通り過ぎていった。おれは昼からそこに座ってた。とりとめもない考えが浮かんできたけど、とりとめがないから、おれの頭には何も残らなかった。頭の中の空洞がふくらんではちきれそうになっていた。自分が実在の人物じゃないような気がしていた。おれはベンチに横になったり、急に正座したりした。喉を潤すのは一本の缶コーヒーだけだった。暇を持て余し死
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)