停滞のリズム/カンチェルスキス
 
してきて、右にも左にも動けなくなったおれの両脇を抜けていった。私服の高校生ぐらいの男と女だった。バイトの帰りのような感じだった。おれを追い抜くと、二人は手をつないだ。おれがいたから一瞬離れ離れになっていたのだ。それまではずっと手をつないでいた。ごく短い距離で。顔は前を見つめたまま、男の左手と女の右手がサドルの下でつながっていた。淡いつながりのように思えたけど、絆は深かった。信号につかまっても、散歩のおっさんが凝視しても、二人は手をつないでいた。何も話さなかった。そのままでよかった。
 手をつなげない日もあった。雨の日で、傘を差さなければならなかったからだ。そんなときおれはいつも、雨が降ってるのを
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