けだものと子(火の地)/木立 悟
ふたつの火の間に
煙は消える
いとおしさ
うなづく いとおしさ
風のない日の
指をすぎるいとおしさ
見るまに変わりゆくものの
とどまらぬ今をたしかめるように
せわしくせわしく触れつづける手
すがたを信じ 裏切られ
それでもすがたを追いつづける手
まぶたを閉じてなおまぶしく
いさかいに降りそそぐもの
いさめもせずいぶかしみもせず
ただまぶたについた泥をはらい
土に落ち 消えゆくもの
水滴が
話しつづけている
ひとりの子が
うたいつづけている
縦と横
右と左の共鳴が
接することなく重なりつづけ
雲を薄明かりに分けてゆく
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