カマキリ/杉菜 晃
へではなく
祖父母の郷へ帰つてきたところに
そもそもの問題がある
きつとカマキリには
小悪魔がのりうつつて
私を待ちかまへてゐたのだ
人生に倦み疲れ
哀れに憔悴して
傷心を慰めに来た男を
追ひ出さうと
こんな辺地にまで先回りして
待ち構へてゐたとは
悪魔の先鋒となつた
カマキリを埋葬せよ!
私は頭に血が上つて
カマキリを蹴り倒した
その上に旅行鞄の車輪を
執念く往復させ
形なきものにした
つぎに汚れた旅行鞄の車輪を
道端の草の上に転がして洗浄した
現場を離れ 振り返ると
カマキリは 踏みにじられ
青汁を出す一本の草と変はりなかつた
すぐに
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)