カマキリ/
杉菜 晃
ぐにも炎天に干され
埃のやうに風に舞ひ上がつて
跡形もなくなるだらう
塵に還つたのだ
人間とてそれに変らない
私は清清して
そこを遠ざかつていつた
☆
私はその夏を とにかく乗り切つた
後になつて思ふに
あのカマキリは
私の犠牲となるために
あへてあそこに
置かれてゐたのではなかつたか
それを私は
こともあらうに
悪魔の先鋒とみなして疑はなかつた
今はもうその土地に祖父母はゐない
たまに墓参りに出かけるが
一度もカマキリを見かけない
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