酔っ払って歩道橋で叫ぶお父さんを見つめる娘の彼氏の元カノの可能性についての考察/千波 一也
 


  おんなは一人の娘である
  あらゆるものに護られすぎて
  手のひらのなかの檸檬はまだ、青
  日ごとに変わる空のような



空の星座は無数の夢たちが揺れる地図
そのたもとでいま
一つの列車が走り抜けてゆく
辺りを揺らして
己も揺れて





或る交差点の信号が
青から赤へと移りゆく
あ、
その中間に黄色があったことをどうか忘れず
個性豊かに
普遍的に
檸檬は黄色であるように

たとえば
ハイヒールとコンビニ袋と銀色の指輪
彼女たちの
これまでについては誰も何も知らない
ただ一つ
信号が青へ戻ること
或いは青へ辿り着
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