酔っ払って歩道橋で叫ぶお父さんを見つめる娘の彼氏の元カノの可能性についての考察/千波 一也
 
り着くことを待つことのみが共通点
たとえば
化粧ポーチと綺麗な手帳と小さなバッグ
彼女たちのこれからもまた
誰も何も知らない



  汽笛はきっと声であろう
  歓喜や嘆きや祈りを乗せて
  誰の耳にも聞き取られることなく
  それはもちろん
  汽笛に限らないけれど
  もちろん限らないけれど





酔っ払って歩道橋に立つおとこは
叫んでいたのだろうし
叫んでいなかったのだろうし
視界から遠ざかる車輌をみつめるおんなは
誰かの背中を想ったかも知れないし
想わなかったかも知れなくて
ただ確かなことは
交差点の信号は必ず黄色を通ること
個性豊かに
普遍的に
檸檬は黄色であるように



   
   地球は絶えずまわり続けて
   そのうえに
   わたしたちは絶えず揺れている

   そして同時に
   つながっている












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