酔っ払って歩道橋で叫ぶお父さんを見つめる娘の彼氏の元カノの可能性についての考察/千波 一也
け遠くを
ただし今度は
窓辺の灯りではなく街路灯の色でもなく
確実に消えてゆくテールランプだけを
おとこは数える
遮断機と遮断機のあいだには
やはり同様に遮断機がある
それは無数に破壊されてゆくけれども
きっと悲しみの類ではないだろう
おんなの目の前を
たぶんに
目の前を
列車が通る
残像の残像だけでも見えただろうか
小さくなってゆく最後尾の車輌をみつめながら
ひとつの恋の未来について
おんなは思案する
おとこは一人の父親である
あらゆるものを背負いすぎて
手のひらのなかの檸檬はただ、赤
清くはない血のような
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