酔っ払って歩道橋で叫ぶお父さんを見つめる娘の彼氏の元カノの可能性についての考察/千波 一也
 
まる
列車はまだまだ向こう
いつもなら強行突破をするところなのに
ついさっき分かれたばかりの温もりに微笑みたくて
夜風に髪をなびかせている





少しだけ高い歩道橋からは少しだけ遠くが見えるから
あちら、そちら、と
向こうの暮らしから順番に
おとこは数えている


おんなの瞳はいましばらく留守だから
線路脇の草たちがお辞儀を始めていることに気付かない
もうまもなく
列車が通る






歩道橋のしたを列車が往く
おとこはその音に振り向くがそこは既に過去である
しかしそんなことには慣れたもので
おとこは再び遠くを数える
少しだけ遠
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