王の退屈/知風
民はことごとく足を止め、おしみのない賞賛と賛同の声を上げたが、実のところ皆、また新しい興行師が街にやってきたのだと勘違いしていた。売春宿<ほおずき亭>のママ・マァギー・マァリィだけが王の演説にエメラルド緑の瞳を曇らせ、足元の砂を蹴って宿に戻っていった。14の時に異国からやって来る以前に、彼女は革命で両親を失っていたからだ。
王は民に革命軍への参加を呼びかけると、猫の舌裏河の辺の巨石<竜虫の食卓>の上に拠点を構えた。革命軍の参加者は瞬く間に膨れ上がり、巨大な板状の石とそれを支える丸い石でテーブル状になっている竜虫の食卓は人でひしめき、一時間周期で左に右にぐわんぐわんと揺れた。なにしろ議会の貴
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