王の退屈/知風
 
はさっそく芋判師を呼ぶと、議会に対する宣戦布告文を彫らせた。そこには、腐敗した政治を正し、議会に巣食う奸賊(かんぞく)どもに容赦なく天誅を下す旨がしたためられていた。議会は大混乱に陥った。果たして王が何故ここまでお怒りになっているのか、そして一体誰を何の罪で罰しようというのか、全く思い当たる節がなかったからである。

 王はかつらを脱ぎ、自由思想家風の着物に着替えて城下に赴くと、国の革命史上の偉人<気ちがい巡査ジョニィ>の銅像の前に立ち、道行く民らに向かって演説した。古代の偉大な哲学者や神学者や講談師やにせ薬売りの名言を引用した華麗にして深遠な演説に、<野薔薇のつる通り>を歩いていた民は
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