王の退屈/知風
 
・ファンダレリィ伯から、黄金の歯に細工を施した象牙の柄、持ち手には滑り止めのルビーをはめ込んだ鍬(くわ)が贈られた。

王は皆に見送られて宮殿を出る時こそその華美な鍬を担いでいたが、街を横切る途中、<聖レィビーの噴水>の側でいつも<ぎざ耳犬>のおいぼれジョーイと日向ぼっこしている<聖乞食>ボゥビィにそれを惜しげもなくあげてしまった。

 聖乞食ボゥビィは人生哲学的理由から一旦それを拒んだが、王が彼の着ている襤褸(ぼろ)との交換を持ちかけると、しばし思案した後、にやりと三本だけ残った味噌っ歯をむき出して承諾の意を表した。衣服を着けない者が高価な宝を抱えている、という状況は新たな
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