鎖帷子のおれ、癒され過ぎ。/カンチェルスキス
 
わってんだぜ」
「あなた、11月生まれ?」
「何かあるのか、11月に」
「何もないわ」
「なら言うなよ」
「もう言わないわよ」
「これでどうだ?」
 おれは歯を食いしばって、顔を何とか縦にしようしてた。
「ううん、もっとこう縦に。工場の煙突みたいに。煙突はみんなまっすぐでしょ。それと同じ」
「こうか?」
 顔の右半分が異常にひきつっていた。限界に近かった。これ以上やると、ジローラモが悲しむ事態に発展する。彼にはいつでも陽気でいてほしかった。悲しい顔のジローラモなんて見たくなかった。
「いいわ、もっともっと」
 畜生、とおれは思った。女の言いなりになってるみたいだった。できた
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