願いましては未曾有の水銀/人間
 
縛りした小父様が壁に手をついて、
幸福論をエアーキャップのように噛み潰していきます。
窓の下で行列を作っているのは、
聖地ウィリクタへ遠足に出かけるのは天下り地方公務員たちです。
日付変更線の向こうでは、
夕日に燃える夕立の中で純朴な瞳が一匹ずつ屠殺されていきます。
私は小父様をピアノ線で縛って、
ロボトミーごっこを致します。





【5】

土曜の晩の事でした。
私の家に未曾有が訪ねてきました。
ドアを閉めようとした所、隙間に孫を挟んできたので、
仕方なく中へ入れる事にしました。
孫にはしゃぶり昆布を与えて放り出しました。
未曾有は髪の長い妙齢の婦人で
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