戯れ/千月 話子
 

複雑な香りに変わっただけなのだけれど


 『濃厚な匂いのする
 インド綿のスカーフを
 私に掛けてくださるならば
 誰だって構わない
 今なら あなたを好きになるわ』


燃え尽きて横たわる
彼女のしゃくに障る爪先の
青白い親指を軽く噛んだの
 代わりに
冷たい床に広がった
私の髪を軽く引っ張られたけれど
2人して「あ 」と小さく悲鳴を上げた頃
私達の慈愛は ゆっくりと目覚めて行くのよ


手を繋いで さあ行きましょう
私達の身勝手な残骸を洗い流しに


乳白色の石鹸を繊細に泡立てて
彼女の肋骨へ重ねてゆけば
美しいドレープのように波打って
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