いのちのいる場所/前田ふむふむ
園で、浮き上がる砂場の寂しさ。
溶け出してゆく滑り台。
隆起するベンチの孤独な音の匂い。
彼らは、見つめられることを待ち望み、
沈黙しているいのちの新芽が、汗を昂ぶらせてくる。
見えているものは、いく度も、過去に呑み込まれて、
後退した輪郭を際立たせながら、
痛みのない言語の廃墟に傷口を、埋めている。
試されている印象、いのちの音階たち――
曲折した眼差しが、わたしを揺さぶり、
一本の直線から、幾重の曲線になり、
やがて、柑橘の裂けた生々しい顔色で、
液状に堆積し続ける、暮れゆく水底のなみだの一滴から、
赤く滴る空の枝の裂け目から、
白く染まった闇を輝かせて、深
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