いのちのいる場所/前田ふむふむ
、深く呼吸している。
深いためいきが酩酊している――眠る空の寝台に、
かなしみの羊歯が繁茂する――闇を染め付ける都会の壁に、
原色の感性が、瑞々しいくちびるを這わせてみる。
繰り返されるいのちの波頭が、霧雨に沈む
ひとみのなかで、赤々と燃えている。
浮上するいのちの意匠を辿るわたしは、
呼気を高めたあなたの稜線を、
青い索引として束ねた季節が、刻まれた地図を広げて、
みずいろの湧き水のような視覚を、飲み干した処女地が、
暗闇の裾野から、浮かび上がってくるのを、
静かに、手繰り寄せながら、
おもいでの葦がいちめんに茂る、湿潤な平野を握る、
この掌のなかで、
小さく、柔らかな感激を浸すのだ。
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