地霊/岡部淳太郎
説が残る土地の霊は、暴走する自
家用車のタイヤの下で窒息しているか。この
地の喉を切り開くが良い。清冽な水を流しこ
んで、ふたたび昔日の歌をうたわせるため、
すべてを開いてみせるが良い。だが、何とい
うことか。ああ、この川には水がないのだ。
それぞれの
奇怪な名前の下で
霊は目醒めるだろう
逆転する
暗転する
この世の法則を
過ぎ去った年の暦に書き
しるして
眠るものの肉を焼くことになるだろう
ふうふうと
息をつないで
ふうふうと
数珠つなぎ
ふつふつと
のぼる息
地の裂け目から
かつての湧水のように
(私はあなたが来る
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