地霊/岡部淳太郎
 
説が残る土地の霊は、暴走する自
  家用車のタイヤの下で窒息しているか。この
  地の喉を切り開くが良い。清冽な水を流しこ
  んで、ふたたび昔日の歌をうたわせるため、
  すべてを開いてみせるが良い。だが、何とい
  うことか。ああ、この川には水がないのだ。


それぞれの
奇怪な名前の下で
霊は目醒めるだろう
逆転する
暗転する
この世の法則を
過ぎ去った年の暦に書き
しるして
眠るものの肉を焼くことになるだろう
ふうふうと
息をつないで
ふうふうと
数珠つなぎ
ふつふつと
のぼる息
地の裂け目から
かつての湧水のように

(私はあなたが来る
[次のページ]
戻る   Point(8)