遺書(ショート&ショート)/虹村 凌
訳でも、幸福の頂点に居る訳でもない。
確かに私は、漠然とした不安、焦燥感、恐怖に駆られる。
果たして生き残れるのか。
私は使える人間なのか。
私は見放されやしないか。
そして私は、同時に漠然とした安心感、安定感、幸福に包まれる。
私は今現在、何の苦痛も無く生きている。
自由を求めるまでもなく、自由を得ている。
そして愛すべき人達がいて、彼らは私を愛してくれている。
全てが未確認ではある。
しかし私にとってはそれでも充分なのだ。
ただ、この何の変哲もない状況にあるからこそ、死を選びたいのだ。
何も雨が私をこうさせた訳では無い。
電車が来ないから死にたいのでは無い。
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