やまびとの散文詩(四)/前田ふむふむ
 
ない、
不毛の荒野の果てにある、誰も見たことのない山々に、
旅立つ為の支度を始めた。
すすり泣きとも、喜びともつかぬ声とともに、
何処からとも無く、唄い出した、
わたしたちのやまびとの歌は、
海びとたちがいる港に停泊している
大きな帆をもつ船にも、高らかに響き渡っていった。

やまびとの散文詩 断片13

空が青々と晴れ渡った日に
海びとの男が、恭しく一枚の赦免状の紙を
渡しに来る。このようなこころの無い形式に
何の意味があるのだろう。
海原を見渡す港に泊まる大船に、激しく憤りを覚えるが
眼の前にとまる幼子のような一羽の海猫のたどたどしい
足取りを眺めていると

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