死に急ぐ/時雨
ばあちゃんに先立たれたじいちゃんは、
僕の母さんの父さんである。
じいちゃんは、タバコを吸い、酒を飲み、
いつも母さんに怒られている。
それでもじいちゃんは健康に気を遣うことはない。
じいちゃんは、母さんのように勉強をしろとは言わない。
父さんのように就職がどうとは言わない。
クソ兄貴のように見下すこともしない。
何一つ僕の手本になるようなことはしていないから、
それ故何も言うことは出来ない、とガラガラした声で言う。
ヤニで黄色くなった可哀想な歯をまちまちに並べてじいちゃんは笑う。
昼も夜もタバコを銜えて、
母さんから
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