Tea For One (ひとりでお茶を)/石畑由紀子
 
を伸ばし、ケーキを口に運ぶ。こんな、今までに何百回と経験してきただろう午後のカフェでのひとときをこんなにも自然に贅沢に過ごしたことは、おそらく片手で数えるほどしかないだろう。
 すぐ隣のテーブルにも女性二人の客がいたが、周りのおしゃべりなど不思議なくらいほとんど気にならなず……いや、正確に言えば周りの客たちもカフェのインテリアのようで、その時間だけはあの空間が私だけのためのカフェと化していたのだ。

 オリジナルホットティーとベリータルト、合わせて1200円。ヘタをするとランチよりも高い価格だ。だがその価値以上のひとときを私は充分に満喫した。贅沢とは、味わう食べ物の美味しさだけではなく、まし
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