Cats/みつべえ
 
れったくて仕方がなかったが、その反面、ガボの詩をいつまでも聞いていたい気持ちもあった。
(おや、向こうから来るのは? )
 「噂をすれば、猫」というコトワザ通り、ガボが姿を現わした。
 ラッタは尾行をつづけていた。木立の陰からガボがエカテリナに近づいていくのを見ていた。
(いい匂いのもとは彼女だったのか)
 ラッタの下半身の突起物が独立してぴくぴく脈打った。
(しまった。あいつに先を越されてしまう!)
 ラッタは地団駄をふんで、歯みがきした。いや、ちがう、歯がみして悔しがった。
(せっかく苦労して呪文覚えたのになあ)
 やがてガボが求愛の詩を朗読しはじめた。よくとおる朗々とした声
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