午後の日ざしの庭/atsuchan69
 
わくなんかないわよ。勇気をだしてドアのむこうに来たらいいのに」と言った。
「あれは本当にリツコさん?」
「そうよ、わたしよ」
 リツコさんはうなづき、そしてぼくの額がこげるほどあついキスをくれた。

 その日の夜、大風がふいた。廊下にもガラス窓からつたわわる恐ろしげな風の音がひびいていた。ぼくはぬいぐるみをだいて階段をおりた。つきあたりのかべ。見知らぬドア。ぼくはノブをまわしべつの世界をひらいた。
 ああ、リツコさんが待っていた。のどかな午後の日ざしをあびた庭にさく花々。そよ風とふりそそぐやわらかな光。「来て」と、さしのばすほそい手。
 青いしまがらのパジャマを着たぼくは
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