午後の日ざしの庭/atsuchan69
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ぼくはこの家でうまれた。赤い屋根の二階だての家だ。庭にはシュロの木がうえられてそだち、げんきに葉をのばしている。
朝、父さんがクルマにのってこの家を出てゆくと、母はきまって化粧をはじめる。
「今日もイイ子にしてるのよ」口紅を塗るかおを鏡にうつしてそう言った。
ぼくには、兄弟がいない。でも、おてつだいのリツコさんは、まるで本当の姉さんのようにやさしくしんせつなうえ、いつもいつもぼくのそばにいてくれた。
「お嫁にいかないでね」
「うん」
「ぜったいぜったい、やくそくだよ」
ぼくたちはバラ園のある庭をみおろすバルコニーで、やくそくのゆびきりをした。風がふき、
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