坂下さん/MOJO
 
作業は終わった。
 帰宅したぼくは夕飯のあとに風呂に入った。浴槽に浸かりながら、女の子のことを考えた。本当にぼくに気があるのだろうか。ジーンズにTシャツの地味で田舎くさい女の子。東金に住んでいるのだろうか。デートするなら父から車をかりよう。片貝漁港の堤防に二人並んで釣り糸を垂れたらどうだろう。いやまてよ。あそこはトイレがないから女の子には無理かもしれない。
 翌日、ぼくは新しいジャージを着て出勤した。
「おや? 太一くん。小奇麗なかっこしてるじゃない」
 事務所で新聞を読んでいた坂下さんが顔を上げていった。
「ふむ。太一にもいよいよ春がくるか」
 黒川さんはそういうと作業着の胸ポケット
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