坂下さん/MOJO
、おれ、女にはモテないっすから」
ぼくは弱々しく応じる。
「よし、午後からその辺を観察しながらやろう」
そういう坂下さんの眼が、ぼくには底意地が悪く光るように思えた。
昼休みが終わって作業に戻った。女の子は相変わらず買い物カゴを手に持ち、ぼく等三人の近くで棚の品物を物色している。いま施工しているフロアはもうすぐ仕上がる。ぼくは隣のフロアに移った。虎ロープを張る。ケレン棒で古い床材を剥がす。黒川さんと坂下さんは一服つけに店外にでていった。それなのに女の子は居る。ぼくは照れた。作業に没頭する振りをしながら女の子を背中で意識した。一服から戻った二人はにやにやしている。そんな風にその日の作業
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