坂下さん/MOJO
る。美味そうだ。明日はモツ煮定食を注文しよう、とぼくは思う。
「ところでさ。坂下さんも太一も気づいてるか?」
いつもは寡黙な黒川さんが話題を変えた。
「おれらが張り替えてる辺りに女の子がしょっちゅう来るだろ。あれはなんだろうな?」
「あー、あれは不自然だよね。もしや太一くんに気があるんじゃないの?」
自然な会話の流れだが、坂下さんが言うとなんだか気に食わない。それに、ぼくは当時、自分の容姿にコンプレックスを持っていて、接着剤で汚れたジャージ姿のぼくに女の子が興味を示すとは考えられなかった。
「やっぱり太一だよな。それしか考えられないよ」
黒川さんも興味津々である。
「いや、お
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