坂下さん/MOJO
 
と吐き出し、あの女の子について考える。決して可愛いとはいえない。どこにでもいるような地味で目立たない子だ。それでも僕に好意を寄せてくれているなら嬉しいじゃないか。僕は未だに彼女に話しかけるか否か逡巡していた。このぼくに女の子の方からカマをかけられるなんてことがあるのだろうか。
 現場に戻ると、ちょうど黒川さんが最後の一枚を貼り終わり、腰に手をあて背中を伸ばしていた。
「太一、作業完了だ。店長から印鑑を押してもらってきてくれ」
 ぼくは、施工完了証明書、を持って店長のいる詰め所に行った。すると、そこにはあの彼女がいるではないか。ぼくは思わず「どうも」と声をかけてしまった。ばつの悪そうな笑顔で「
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