坂下さん/MOJO
 
ですよ。確かに彼女はおれを意識している。それは解るんだけど……」
「太一くん、もっと楽観的にいこうよ。どうせいま彼女いないんでしょ?」
「坂下さん、おれ、女慣れしてないのは事実だけど、あれはやっぱり見初めるって雰囲気じゃないよ」
「もったいないなぁ。おれが太一くんなら絶対ものにしちまうんだがなぁ」
 坂下さんは食後の一服を吸いながらにやにやしている。
 昼からの作業は僅かなスペースしか残っていなかった。古い床材を剥いで床面の埃をほうきで掃き取ると、ぼくの仕事はなくなってしまった。
「一服しに行ってきます」
 ぼくは黒川さんにそう告げ店外にでた。ハイライトを咥え火をつける。煙をフーと吐
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