あやしい一円玉自動はんばい機/atsuchan69
――ところでゆうた、ひとつたのみがあるんだ。聞いてくれるかい」
「え?」
「きみが勉強をがんばって、いつか偉い人になったら、ワタシがおうちへ帰れるようにしてくれないかな」
その声は、言葉よりあわれなひびきを耳にとどけた。
この一円玉自動はんばい機、じつは誰にでも一円でジュースを売っているわけではなかった。それは、「あそこの自動はんばい機でジュースを買ったらおつりが出てこなかったぞ」とか、「このあいだ、ジュース一本が千円で売っていたぜ」とかいうウワサがぼくの耳にもとどき、わかったことだ。
それから早まわしのように年月がながれた。
ぼくは大学をそつぎょうし、やがて社会人とな
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