誇り/広川 孝治
つまり貧者のための外来診察をしていたのだ」 しかしもうそれは言い過ぎであった。彼は今や私の上に襲い掛かり、私を地面に突き倒し、憑かれた者のように喚き散らした。私はもうどうなったか判らなくなってしまった。
(中略)
・・外面的にかつ相対的に見れば全く単純なこのエピソードの示すことは、かなり衰えて無感覚になった者にすらも、何らかの外的な粗暴さやそれによる身体的な苦痛よりも、それらすべてに伴う嘲弄に対しては、激昂の波が襲うこともあるのを示している」
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この精神医学の専門家は、強制収容所で労働監督に逆らうことは、自分の命を危険にさらすことになることが判っていたにもかかわらず、嘲弄
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