近代詩再読 立原道造/岡部淳太郎
その部屋は からつぽに のこされたままだつた
(「小譚詩」全行)}
詩集『暁と夕の詩』に収められたこの詩はわりと好きな詩だ。静寂の中にふっと現れる喧騒の幻。だが、それはやはり幻でしかなく、部屋は以前よりもよりいっそう静まって「からつぽに のこされ」てしまう。孤独の中にあっても世界の動向を直観的に感じ取る詩人の洞察力が、うまい具合に抒情の中に溶かしこまれているように思う。
立原道造のような夭折詩人の場合、生前に刊行された詩集だけを見るのではその全貌を捉えることが出来ない。膨大な量の未刊詩篇や拾遺詩篇の中にこそ、より面白い詩が眠っていると思う。
{引用=コップに一ぱいの
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