近代詩再読 立原道造/岡部淳太郎
いの海がある
娘さんたちが 泳いでゐる
潮風だの 雲だの 扇子
驚くことは止ることである
(「コップに一ぱいの海がある」全行)}
第一詩集『萱草に寄す』を刊行する前、立原道造は手作りの詩集をいくつも作っていたが、これはそうした手作り詩集のうちのひとつ『さふらん』に収められたものだ。四行詩ばかり収められたこの詩集の収録作品を見ていくと、後の刊行詩集に収められた一連のソネットとはまた違った味わいがあって面白い。立原は詩を書く以前に自由律短歌を書いていたらしいが、これらの四行詩はその延長線上にあるものだろう。後のソネットと比べると立原らしい清新な抒情はまだ現れていないが、その代わりに
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