母さん、あなたの笑顔が見たい/美味
 
で笑っている僕を見て
泣きそうな顔で怒鳴った
あぁ、こいつは嫉妬しているのか
母さんばかりに気を取られて
何も兄らしいことをしていなかった自分を思い出した
「繁樹、ごめんな」
心から謝れた


十六歳のときに家を出てから
初めて実家を訪れた
沢山の人のおかげで
今日ここに来れたのだと思う
家の中は子供のときと変わらず静かだった
リビングにおいてある写真立てには
あなたと弟が笑っている
この家に僕の写真はないのだろう
それだけで少しほっとした

「あ、あら、帰ってたの…?」
あなたは外から帰ってくると
僕が家にいることに驚き
昔と変わらず、怯えたような引き
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