母さん、あなたの笑顔が見たい/美味
 
引きつった笑顔をした
こうなると分かっていたはずなのに
なぜこんなところに来てしまったのだろう
なにを期待していたのだろう
「もう、行くよ」
帰ろうとする僕をあなたは引き止める
そしてそのまま、思いの丈を僕にぶつけた
あなたは僕が出ていってからも、ずっと僕のことを考えて
いたのだという
毎日、罪の意識に駆られていたのだという
僕とまた一緒に暮らす方法はないのかと考えていたのだという

あぁ、あなたは赦して欲しかったのか

涙を流してすがり付くあなたの背中は
こんなにも小さい
わだかまっていたものが糸のように解れていく
僕はやっぱり母さんに笑って欲しい

「母さん」

僕は普段と変わらない笑顔で母さんを見る
それを見た母さんは言葉を失い
引きつった笑顔は瞬く間に崩れていった
そして、僕がこっそりとあげていた花を見る時の
母さんの優しい笑顔が浮かんでいた

あぁ、僕はずっと、この笑顔が見たかったんだ

「母さん」

僕は、母さんの子供で良かったよ



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