おもいで??よみがえる記憶/前田ふむふむ
 
失踪する雑踏――葬られてゆく錯綜する都会の鼓動が
不整脈を晒している。
失踪する現実――訪れるものは、立ち上がらない
睦言の形骸だろうか。
黒い朝焼けを掴み取るまなざしは、
凍りつく陶酔の血液を覗かせて、
荒廃した失われた時間のなかの、
透明な砂漠のみずうみを、巻き戻されて、泳いでいる。

わたしは、いまは瓦礫となった白い尖塔のあった丘で
かつて、青々とした春を愛でた指先が、
ふたたび、鮮烈な過去を、なぞるように追憶しても、
降りそそぐ残桜の儚い香りが、
無音の軟らかい無機質な映像の芯を、
歪んで茶褐色の荒野に導いてゆく。

過去は、追いかければ、さらに遠い記憶の
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