クアラルンプールのけぞる/カンチェルスキス
ベース、ぐらいしかなかった。立ち食いスパゲティ屋なんかどこにもなかった。以前存在してたとも思えない。交番に行って訊ねると、黒髪ショートの女警官が答えてくれた。
「長いほうが似合うかしら?」
「‥‥‥‥うん、いや」
気のない返事をすると、女警官は急に表情が変わり、突然怒鳴りだした。
「ねえ、わたしを逮捕して!ねえ、わたしを!罪深いわたしを逮捕して!ねえ!」
ラーメンどんぶりにカツオブシに醤油を垂らしたものを与えると、女警官は落ち着いた。両手を使ってがつがつ食べながら悲しそうに言う。
「ごめんなさい。先月のマラソン大会でゴールのテープを切る前にテープが片付けられ
たことを思い出しちゃ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)