クアラルンプールのけぞる/カンチェルスキス
 
ちゃって。民家の軒先で干し柿を干すのに使われてたわ。ショックだっ
たの。初めての一位だったのに」
「クアラルンプールのけぞる」
 おれが言ったら、女も答えた。
「ハッピー四駆」
「生まれ故郷は?」
「越後」
「だったらセルジオ」
「そうなの辛口」
「フットサルでは意外に俊敏」
 なかなかいい感じだったが、カツオブシがなくなると女警官がまた同じことを怒鳴りは
じめたので、拍手が欲しくなって、その頃からおれは駅前で弾き語りギター売りをはじめたんだ。立ち食いスパゲティ屋はなかった。あれかな?と思って近づいて見ると、アラーキーが裸の女を天井に吊るして写真を撮る写真館だった。なんで一見したときにおれは気づかなかったんだ。立って食えば違う食い物に進化するわけでもなかった。スパゲティはスパゲティのままだった。うまくもまずくもならなかった。もちろん変化すりゃいいってもんでもない。うどんだって同じことだろう。女座り食いスパゲティ屋なら少し話が変わってくるかもしれない。たいした期待もできないが。






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