夜に向かう実験艦シュレスヴィッヒ・ホルスタイン/大村 浩一
重力式鳩時計が本体ごとぐりんぐりん回り出したのだが
<南方と詩に関する連を追加>
とここに最初から書いてあったが
なんにも思いつきませんのでこのまま
だいたいこの齢になって「実験」などとは片腹痛い
そんなものは若い頃の泡娘くんずほぐれつ四十八手裏表で
お互いとうに遺憾無く乗り越えてきた筈ではないか
壊す力を奮う、壊れるものが無い ※1
そんな事はこの船上レストランを見ていれば
すぐ分かるじゃあないか
(まっすぐな詩など要らぬ 性悪女のねじくれた詩こそが要る)
幽霊夜行列車さながら悲しげに
フヒョロロォと蒸気圧の足りない汽笛ひとつ
光り
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