陰翁/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
ると響いてくる風になった。そして響きが大きくなるにつれて、ただ椅子に座って机に肘をついているだけの体がゆっくりと、しかし嫌な感じで廻っていくのを、別の意識がまるでCCDキャメラのモニターにでもなったかのように映し出しながらも、それを実感している意識の方が、
──耐えろ、耐えろ……──
と力強く命令していた。従わなければ気絶してしまうか吐き戻す様な、それでいて通常の、例えば乗り物酔い等ともまた違う忌まわしい回転運動。いつしか拳を固くして、前かがみになっているしか成すすべがなかった。
どこかに気をやってしまいたくて辺りを見回そうとするが、もう先ほどの風もどこかへ気まぐれにいってしまい、見えてい
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