陰翁/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
 
ていた色もいつしか消えていた。他には見慣れた風景だけがただあって、様子見を決め込んでいる。堪え、堪えて、ゆっくりとしか過ぎない時間に焦れながらも、ようやく悩まされない心持になった時には眠ってしまっていたらしく、気が付くと、雲に遮られながら照らされていた日光が消えていて、窓に薄赤い名残が、地平線に這いつくばりつつ広がりながら、ただ残されるだけだった。

 何の気なく、ふとした拍子にこうした幻惑に遭うので、いつも外には出られなかった。
 出たくても、身体が出してはくれなかった。
 ただ色のついた風が、語るでもなくこちらに顔を出すだけだった。
 まるで、少しだけ意地悪な、悪戯っ子のように。
戻る   Point(2)