Drawing/鈴本 蘭乃
 
神であろう、と思った。神はわたしの中で、どこまでも残酷で、冷徹で、意地が悪く、何者も救わない者として存在していたから。

「わたしが今すぐ消えても良いと思っているのか」
と、訊ねたわたしに、男は言った。
「そんなことは言っていないだろう。居なくなっても良い人間なんて、ひとりも居ないんだ。」
「さっきと言っていることが違うじゃないか」
わたしがそう反論すれば、その男は、
「居なくなってはならない人間も、居なくなっても良い人間も、どちらも存在しないのだよ。分からないのかい?」
と、小馬鹿にするかのような笑みを浮かべた。わたしにはその笑みが、嘲りか、もしくは哀れみを含んだそれに思え、居た
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