「あたりまえの日々」/服部 剛
 
・・・? 」 
「 はい・・・けが、大丈夫ですか・・・? 」 
男の顔を見ると片目が失われていた 
「 俺は若い時から失明しちまってよう、
  義眼もめんどくさくて自分で外して捨てちまってよう、 
  誰も頼りにできねぇから、
  自分でなんとか稼(かせ)いでここまでやってきたんだよ 」 

六 

明日の朝も 
背負ったリュックサックの中に
一昨日出逢った人が送ってくれた本を入れ
いつもと変わらぬ出勤者の群に紛れて僕は 
薄汚れた駅構内の床に響く 
単調な無数の足音を聞くだろう 

( 杖をつく、怪我(けが)をした中年を追い抜いて
( 人込みの隙間
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