「あたりまえの日々」/服部 剛
 
を過ぎていた 
僕は何故かふらふらと帰る方向と逆の西口へと
人気(ひとけ)ない駅の構内を歩いた 

駅を出て、川に架かる橋に佇(たたず)み、
静かに流れる夜の川の向こうのバス停を見つめる

( 毎朝出勤する僕が
( 追いつく弱さを振り払おうと気を入れた表情でバスに乗り
( 職場の老人ホームへと運ばれる後部座席に座る後ろ姿 

五 

こみ上げて来た涙を瞳に滲ませ 
橋を去った僕は再び駅の構内に入り階段を上ると 
額から血を流した大柄(おおがら)な酔っ払いがふらふらと下りて来て 
階段の途中でへたりこんで腰を下ろした 
「 もう電車ないんですか・・
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