恋/霜天
長い髪を引かれた後に、残していった重さ
開いては閉じて、を繰り返す手のひらに
理由を隠す隙間なんて、どこにもないことに気付く
もうここにはないもの
空をかき混ぜた手
海から斜めに伸びていく街には
また風車が増えたらしい
空をかき混ぜた、手
響く音の深さを、海に届く明かりを
行方は誰にも分からないし
行き着いた先に住む人が
笑顔でいるらしい、ことを
知らなくても
知りたいことよりも
知らなきゃいけないことよりも
知ることが出来ないことの方が
旅先で道に迷った御守りが
頼るものもなくただ、揺れているのを
見なかったことにして
見えなかったこ
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