恋/霜天
 
たことにして
気付かなかった、ことに
渡しそこねた後姿は
何度ここを通っただろう
海から斜めに伸びていく街には
強いだけの風が吹いて
いつでも、潮の香りがする
包まれたことは何度もあっても
その中までは、いつも見えない


そして、途方もない

知らないものばかりが降ってきて
動けなくなる道の途中
クラクションが鳴り響いても
何もかもが素通りしていく
空をかき混ぜた手を
どこに仕舞ってしまったのか
糸電話の、震える
その脆さと
確実性
たくさんの声に聞き返して
もう一度そこで
風車の響く
音を聞きたい



いつも
いつも



鼓動の進む足音の分だけ
それがそれであることに気付かされる
通り過ぎた後の
いつものこと
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