夜/葉leaf
は増え、夢は頻繁にめくれ上がっては一層密に無音の旋律を束ねてゆく。夢は人の体に触れ、その内側を探るが、新しく人を実らせることはできない。夢はただ、夜の断面に吸い付きながらひたすらに自転するだけだ。
人が経験するのは夢の裏側である。夢の表側には、鳥の眼が彫り込まれている。この眼は何も見ることができないが、そのかわりその質量は描かれないまま夢を凝集させる。鳥の眼の慎密な鼓動がなければ、夢は湿った硬砂へと分解してしまうのだ。私は夢を見るときはいつも、夢の表側に流れる血の味を確かめている。
私の夢には常に音楽が忍び込む。表側を吹きすさぶ無音の旋律が、鳥の眼を通って、音を得て、裏側へと吹き込んで
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