マトス  (ショートストーリー)/よーかん
 

「いつも同じカラスなのか、ここで時々考えるんです。」
男がまたうなずく。
「動物学者なら、簡単にその答えをくれそうだけど。僕にはなんだかそれではつまらなくて、なんだろう、そのカラスがあそこにいて、あそこからいつも何かを眺めていて、つまり、同じカラスだといいなと思っているんです。」
「はい。」
「あの二羽の鳩は違います。」
僕はタバコを挟んだ手の小指で鳩をしめした。
「たまに三羽で、たまに二羽。一羽の時もあります。雨の日にはいないと思われるかもしれませんが、雨の日もいる時があります。」
「なるほど。」
「カラスが旋回して、鳩が道路に舞い降りて、車と人が通りすぎて、その繰り返しだけど
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