マトス (ショートストーリー)/よーかん
けど、どれもけっして交わることはありません。」
男が窓に体を向けなおした。
「つまり、あのカラスは。ていうか、あのカラスが同じカラスなのかなんていうのはどうでもいいことで、僕はいつもあのカラスを見ることが嬉しいなんてセンチメンタルな気分を味わうためにここに来ているわけでもなくて、カラスがあそこにいつもとまっているなんていうのは今ただ思いついたことで、それから、その、確かにカラスはあのアンテナによく止まっているのだけれど、ここでは、あそこにカラスがとまっているなんて会話をする相手と来たことなんてないものですから。つまり。」
「つまり?」
「僕はまが好きかもしれません。」
「はい?」
「ま
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